日記

princess2018.07.11

すこしむかしあるところに、王女さまとお妃さまがいました。

 

ふたりは冬のはじめに出会い、当時王女は二十代前半、お妃は十代。

王女は凶暴なバンドを、そしてお妃も凶暴なバンドのヴォーカルをやっていて、

ふたつのバンドは神戸の、いまではもう営業していないちいさなライヴハウスで、

たくさんのバンドの出る対バンとして出会いました。

 

 

 

 

 

はじめて対バンした夜、

終演後の打ち上げといった概念のないお妃のバンドがほとんどはじめて打ち上げに出ました。

なぜなら、王女のバンドがあまりにもかっこよかったからです。

 

 

自分とは正反対に真っ白な肌。まっくろなアイラインとあかい口紅。

ぺらぺらとした水色のスリップを着て、

長い金髪を振り乱し暴れまわる王女のステージにお妃はこころを撃ち抜かれました。

たとえ恋であっても、あれほどに胸は高鳴らないでしょう。

 

お妃ははじめてこころからのブルースを、不器用な美しさを見たのです。

 

 

 

 

 

打ち上げの安居酒屋で隣の席になったふたりは、いろいろなことを話しました。

そう、デビルマンの。

王女もお妃もデビルマンが大好きだったのです。

そのなかでも王女はシレーヌというキャラクターが好きで、『彼女になりたい』と言いました。

「あのカイムと合体したシーンがいいんだよね~もうほんと大好きでさ~」

さっきまでひとを埋めるような目でステージを繰り広げていたのに、そのくちからはゆるやかな青森弁。

 

 

 

お妃は、デビルマンのはなしを、

そもそも他のバンドをやっているひととほとんどはじめてまともな会話をして、

しかも、にわかにはなかなか語り合えないくらい大好きな作品について、

初対面の青森弁の女の子と、神戸の安居酒屋で話せていることに感動しました。

 

 

お姫さまがかわいらしく男の子から「おにーさん一本ちょうだい」ともらいたばこしてはゆっくりと吸う、そのムードがあまりにもすてきで。

ほんとはたばこが大きらいな女王さまが、そばにいて匂いが気にならないほど

女王さまは、お姫さまと、彼女のやっているバンドがだいすきになったのです。

 

 

 

 

 

 

 

月日は経ち、女王さまのバンドははじめて東京都でライヴをすることになりました。

出演のオファーはすぐさま、二つ返事。

なぜなら、お姫さまのバンドに呼ばれたからです。

 

 

 

 

女王さまたちは大きなスーツケースにありったけの衣装を詰めて、

夜行バスで新宿に降り立ち、早朝の下北沢、ハンバーガーショップで時間をつぶしました。

 

 

眠気と退屈で心は折れそうでしたが、負けられません。

お姫さまのバンドに呼ばれてきたんだから。

ちいさなライヴハウスにたくさんのお客さん。

もっとちいさな楽屋で準備をする演者たち。

 

 

 

あっという間にライヴは終わっても、家には帰れません。

未成年でどこにも泊まれない女王さまたちの若さにも、睡魔が襲います。

それでも明け方まで、お姫さまたちとジュース片手に語り合い、

早朝の漫画喫茶で浅く眠り、なにもわからない東京で時間を持て余して、

やっときた夜行バスで深く眠り、気付けば地元神戸に着いていました。

 

 

 

そんな日々があれもこれも遠いむかしのようでいて、なにもかも先週のことのように思い出します。

当時使っていたMACのバッタもんのアイシャドーパレットの、ラムネのような匂い。

イミテーションにするか本物にするのか、はたまたされるのか。

いつまで経ってもけして簡単な美談には出来ないような、熱を持った澱のような日々。

 

 

 

 

 

 

 

当時の女王さまは、いまよりもずっと格段に不器用でした。

対バンでの理想はステージでのクロスカウンターで、お互い失神すること。

物騒でしたので知り合いは増えようが、お友達はなかなか出来ません。

『わたしたちは、このバンドたちを、ぜんぶ、潰す』以外の感情を持ったことがなかった。

でも、

あの頃はどのバンドもみんな、根底はきっと同じだったはず。

 

 

それでも、それを破壊衝動だとかパンクだロックだとかのきれいなお皿、

住み良いゲージの範疇を超えて、業としてステージに放つことが出来ていた、

放ててしまっていたひとは指折りで。

 

 

そのなかでも幾人もがその業に呑まれたり、持て余すようにして、

ステージを去って行きました。

 

 

その業をなるべくコントロールして、業を使い、生活のために生きてゆくこと。

文字通り、生業。

不器用な美しさを内包し続けること。

それはとても難しいことです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初の東京公演以降も、お姫さまのバンドと女王蜂は頻繁に共演をしました。

それに連れて次第に女王蜂にも、お姫さまの、

 

彼女のバンドにも色々なことが起こりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あのとき、ほんとにわたしがベースでも弾けてたらなにか出来たのになって、いまになっても思う。

 

誰も悪くないことを許せないまま、対バンするたびに毎回フロアやステージ袖でまっすぐに観てる彼女にあるだけのこころを向けて、毎回、最後のバラードを歌ってた。

 

 

 

 

 

 

きっと、お酒もたばこも、恋も、ほどほどにって難しいよね。

 

 

もし子供を産んだらわたしはきっとこんな感じなのかなって思いながら、見守るしかなかった。

 

見守ることしか、できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再始動のときも、新宿で三組でやったよね。

名前もメンバーもバンドのムードもガラリと変わったけれど、あの曲をやってくれてほんとにうれしかった。

色とりどりの風船ときらきらのモールで飾られたステージで、トリを任せてくれて、お祝いだし、わたしたちの衣装も思いっきりかわいく寄せたんよ。

ルリちゃんなんかうさ耳つけて。

わたしたちのステージによろこんでくれてうれしかった。

 

 

あのときの三組そのままではもう集まれないことだけが、わたしにはさみしいよ。

わかってはいるけどね。

 

 

 

 

 

 

 

先日の七夕、青森公演でやしちゃんが作った開演BGMから彼女のバンドの曲が流れてきて、

しかも彼女が来ることをやしちゃんから訊いて、

いま青森にいるんだ!って、そのときに走馬灯のようにいろんなことを思い出したのだけれど。

 

あの街からあんなにかっこいい歌たちを作ってきたあなたを、こころから尊敬する。

 

 

 

終演後会えなかったけれど、いまの女王蜂を見てもらえてすごく、すごくうれしかった。

やっと来れたんだなーって。

 

 

 

 

 

夙川の休止ライヴでばったり会った以来やったから、

会ったらぜったいデビルマンのはなし、してたね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の仙台公演の開演前にふと映像見たらやっぱ、泣けてきちゃって。

 

 

ほんとかっこよくて。

いまでもけして、かっこよかった、とはならないくらい。

 

どれもめっちゃ音割れして超低画質なのにそんなん関係ないんよね。

まだどの曲も覚えてる。

 

 

あなたたちがいなかったら、わたしは、とさえ思う。

 

 

 

 

 

 

また観たいなって、思ったりもするけど

わたしらにとってバンドをやるってことがどれほどのことなのかは、判るから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひとの夢や、業を背負うことはわたしは得意なくせにあんまり好きではないけれど、あなたのだけは、って思う

 

 

 

なんだろうね

 

 

たまにはね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お元気ですか?

わたしは元気です

 

ではまた

xxx

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